LAVA [音楽]

以前の記事でも取り上げたSimone Kermes の<LAVA>と言うCD を購入しました。

Simone Kermes.jpg

このCD は、18世紀ナポリ派の作曲家(彼等がナポリに住んでいたとは限りません。18世紀の西ヨーロッパで圧倒的に支持を得ていたオペラがナポリ派様式で書かれた作品だったからです)の書いたオペラのアリア集です。





以前の記事でも書いたように、彼女の歌唱は、起伏に富んでいます。楽譜に書かれている音の並びを、綺麗に整える事に、彼女は固執しません。彼女が或るフレーズや言葉の表現に必要性を感じるなら、話し声に近い声を歌声に交える事もします。勿論、徹底的にレガートでも歌う事もしていますが、静的な歌でも、ディナミークや音色を微妙に変化させて、歌に彩りを与えています。彼女の歌唱は、音楽や言葉が要求する表現を直截にリアライズしていると、僕は感じました。

彼女の声自体は、やや痩せ気味で、声の響きの幅も狭いですが、聴いている内に、18世紀の歌手の声は、若しかすると、彼女のような声だったのではないか、また歌い方も、彼女の歌い方に近いものだったのではないかと思えてきました。Kermes は、18世紀の発声法や表現法を研究しているのかも知れませんね。

現代の発声技術と表現法で、18世紀以前の音楽を表現するのも、勿論、認められて良いと思いますが、Kermes のように、当時の技術や表現法に近付こうとする姿勢で18世紀の音楽を表現するのも、貴重な事と思います。

また一人、大切な音楽家が増えました。

arata
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コメント 7

エスカリオル

18世紀の発声法は現代のオペラ歌手の発声と異なっていたんですね!?
でも、全てのルーツはここにあるのかと思うとその発声をしているkermesは本当に大切な音楽家ですね。

ナポリ派のオペラは、18世紀前半に栄えていたヨーロッパのオペラ界の中心的なオペラですよね。

いい情報ありがとうございます。

by エスカリオル (2010-11-26 20:02) 

nyankome

歌声とともに顔の表情や身体全体を使った活き活きとした表現が印象的ですね。より人間らしい表現の究極の姿かも知れませんね。
Petibonの歌い方とは違いますが、共通するものを感じます。
by nyankome (2010-11-26 20:26) 

arata

エスカリオル様
御訪問・コメント有難うございます。
Kermes が、正確に18世紀の発声法・表現法を実践していると言い切ってしまうのは、危険かも知れませんが、僕には、そう聞こえるのです。
恐らく、彼女は18世紀と現代とをリンクさせる音楽表現を追求しているのでしょうね。それが貴重だと思うのです。

nyankome 様
御訪問・nice・コメント有難うございます。
Kermes にとって歌とは、単に歌声で旋律を辿る行為ではなく、顔の表情・身体全身の動きを使う音楽表現なのだと、僕は思います。僕も、Petibon との共通点を感じました。
やはり、音楽は、どの分野であっても、聴く人の心を揺さ振るものであって欲しいですね。先日貴方がお聴きになったCarmignola もそのような音楽家だと思います。

arata
by arata (2010-11-26 21:02) 

arata

Promusica 様
御訪問・nice 有難うございます。
arata
by arata (2010-11-27 05:46) 

glennmie

この方の表現力はすごいですね。
音楽性、リズム感もすごい。
ジャンルは違うけれど、ジャニス・ジョプリンやビョークみたいな存在感の人だなと思いました。
by glennmie (2010-11-27 11:30) 

arata

glennmie 様
御訪問・nice・コメント有難うございます。
貴女も、Kermes の表現力の並ではない凄さ事を感じ取られたのですね。本当に凄い音楽家だと思います。彼女の歌唱は、良い意味でのパフォマンスですね。全身で音楽を表現しています。これは、音楽が演奏家の全身・全神経に音楽が沁み込んでこそ、成し遂げられる事だと思います。
arata
by arata (2010-11-27 19:00) 

arata

アヨアン・イゴカー様
御訪問・nice 有難うございます。
arata
by arata (2010-11-29 03:54) 

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